包丁は、自分で料理をするようになると使い始める調理器具です。家庭で使うだけだからと100円ショップなどで購入する方もたくさんいますが、包丁には実にさまざまな種類があるとご存じでしょうか。
用途によって使う包丁を変えれば、それだけ料理が快適にできます。
本記事では、包丁の種類について詳しく紹介します。また包丁の選び方についても触れていくので、これから包丁を購入しようとしている方は参考にしてください。
包丁の主な種類
包丁にはたくさんの種類がありますが、以下の3つに大別できます。
- 和包丁
- 洋包丁
- 特殊包丁
和包丁
和包丁は日本がルーツの包丁のこと。和食は世界的にも特殊な料理で食材に合わせて使う包丁を変えますが、特に多いのは魚専用の包丁です。また、右利きと左利きの両方に合わせた包丁があります。
和包丁は日本刀の技術を生かした製法で造られており、本来は柄も打ち込み式でした。これは差し込み式にすることで柄の取り換えが可能なため、個々の手に合う素材や形を選べるようにです。しかし近年では材質にステンレス鋼を利用し、洋包丁と同じように造られているものも多くなっています。
刃は基本的に「片刃構造」です。片方にしか刃がないためまっすぐに食材を切るのが難しいのですが、食材の断面を奇麗に仕上げられるという特徴があります。
洋包丁
洋包丁は明治時代に日本に入ってきた包丁です。肉を切ることを目的に作られており、主に西洋料理を作るときに使われます。現在、日本の家庭で使う包丁は、基本的に洋包丁の「三徳包丁」です。構造は洋包丁なのですが、名前が和風なので和包丁だと誤解されています。
刃は「両刃」が一般的。両方の面に刃がついていることでバランス良く力を加えられ、食材を切ることが簡単になります。
柄は和包丁と違って差し込み型ではなく、鋲(びょう)といったいわゆる釘のようなもので固定するタイプ。そもそも洋包丁は両刃のため、包丁一つでなんでも対応可能です。差し替える必要がないことから固定式になりました。
特殊包丁
特殊包丁は使う食材ごとにより特化した包丁の総称です。食材にあったものを使うことで、作業効率を高めて時間短縮を図ります。
ウナギ用やフルーツ用などといった専用のもの以外にも、変わった形をしている包丁なども特殊包丁です。
和包丁の種類
ざっくり和包丁とひとくくりにされますが、ここからさらに種類が分かれます。ここでは代表的な和包丁である、次の5種類についてみていきましょう。
- 出刃包丁
- 小出刃包丁
- 菜切り包丁
- 舟行包丁
- 柳刃包丁
出刃包丁(でばぼうちょう)
出刃包丁は魚を三枚におろすときに使われる包丁です。また、魚のうろこ取りや骨を砕くのにも使われるために刃が重く厚くなっています。元々は魚専用でしたが、現在は肉に使う人もいるようです。
切る対象の魚によってさまざまなサイズがあります。刃が太く重いため頑丈そうに見えますが、刃は片刃で薄いので使い方によっては刃こぼれすることもあります。扱いは慎重にしなければなりません。
小出刃包丁(こでばほうちょう)
小型版の出刃包丁です。小さな魚をさばいたり背開きをしたり、三枚におろしたりするときに使います。
あじ切り包丁に似ていますが、基本的には出刃包丁と同じ使い方をします。
菜切り包丁(なきりぼうちょう)
菜切り包丁は野菜用の包丁です。現在は一般家庭で最も使われているのは洋包丁の三徳包丁ですが、昭和以前では菜切り包丁が広く普及していました。
刃は薄く幅広く、尖った刃先を持ちません。和包丁は基本的に片刃であると前述しましたが、菜切り包丁は両刃です。均一に力を込められるため、野菜の千切りや葉野菜のカットが楽にできます。また、刃が薄くまっすぐなため、大根のかつらむきなどにもぴったりです。
舟行包丁(ふなゆきぼうちょう)
舟行包丁は、漁師さんが使う包丁です。船の上で魚をさばいたり簡易的な料理をするときにこれ一本で済むように作られています。
形としては出刃包丁を薄く細くしたもの。片刃で軽量かつ、使い勝手がよく、小魚から野菜まで切れます。
柳刃包丁(やなぎばぼうちょう)
柳刃包丁は魚の身を切ることに特化した刺身包丁のひとつ。寿司職人などが使っています。
使い方は、刃元から切っ先までを使って手前に引き切るようにします。切り口は美しく、刺身をきれいに見せるために必須の包丁です。
鏡面仕上げがされていることで錆びにくくするだけでなく、包丁の表面を滑らかにするため食材の繊維を崩さず鮮度を保つ効果もあります。
刺身包丁は関西と関東では形が異なり、関西では先端が尖っているもので「柳刃包丁」。一方、関東では先端が四角くなっており、呼び方は「蛸引包丁」です。
洋包丁の種類
洋包丁の種類を紹介します。代表的な包丁は、次の6つです。
- 三徳包丁
- 牛刀
- 筋引き包丁
- ペティナイフ
- パン切り包丁
- パテントナイフ
三徳包丁(さんとくぼうちょう)
現在一般家庭で最も使われているのが三徳包丁です。肉・魚・野菜と3つの食材を扱えることから「三徳」の名前がつきましたが、万能包丁もしくは文化包丁とも呼ばれています。
刃渡りが16.5㎝前後の長さがあり、刃は薄く軽く扱いやすいため、最初に買う包丁としておすすめです。
牛刀(ぎゅうとう)
牛刀は洋刀やシェフズナイフとも呼ばれています。名前には「牛」がつきますが、幅広い食材に使われる一種の万能ナイフです。日本に入ってきたときに牛肉と共に来たため、それまで牛肉を食べなかった日本人にとってインパクトが強く、この名になったと言われています。
三徳包丁よりも刃渡りは長く約20㎝で、大きな野菜(白菜やキャベツなど)も切れ味よくカット可能です。さらに尖った切っ先で肉の筋切りもできるなど、細かな作業もできます。
筋引き包丁(すじひきぼうちょう)
筋引き包丁は別名「カービングナイフ」とも呼ばれる包丁です。大きな肉のブロックを筋に沿って切り分けて、筋のない部分だけを切り出すために使われます。
刃の幅は狭く薄く、肉の筋が持つ曲線に沿って刃が動かせるようになっています。そのため、スライサーとしても使用可能です。
ペティナイフ
ペティナイフは小型のナイフで、通常、果物の皮むきなどに使われます。牛刀の小型版と考えてください。
刃渡りは11〜15㎝程度。力が不要で女性や子どもでも使いやすいため、小さな食材を切るのにも便利です。野菜や果物の飾り切りなどにも使えます。
パン切り包丁
パンを切るための専用の包丁です。
柔らかいパンでも潰さず奇麗に切れ、長期間使用しても切れ味が落ちにくくなっています。ただし、デメリットとしてはパンくずがでやすいことと、刃は波型をしており、細長く薄刃のため、取り扱いに注意が必要です。
パテントナイフ
パテントナイフは側面にくぼみがある包丁です。くぼみは切ったものが刃に吸い付かないようにできています。たとえばハムやスモークサーモンなどを切るときに便利です。
特殊包丁の種類
特殊包丁の種類です。こちらにもたくさん種類はあるのですが、一般的に知られている包丁を3つ紹介します。
- 中華包丁
- 寿司切り包丁
- 餅切り包丁
中華包丁
中華包丁は中国の包丁を起源としており、中華料理で使われています。
特徴は刃の幅が広いこと。重量もあり、包丁全体の重さを活かして食材をたたき切るように使います。特に、大きくて硬い食材、たとえばタケノコなどを切るときに便利です。
また包丁の広い面を使えば、中華料理ではよく使うニンニクやショウガなどを叩き潰すのにも役立ちます。中華包丁が一本あればどんな食材にも対応でき、とても便利な包丁です。
寿司切り包丁
巻き寿司や押し寿司のカットに用いられる包丁が寿司切り包丁です。海苔を普通の包丁で切ろうとするとひっかかったり刃にひっついてしまったりすることがありますが、こちらを使えば解決します。
海苔や具材、シャリを潰さずさくっとカットできるように、刃は両刃で幅広、丸みを帯びた形です。
餅切り包丁
お餅を切る専用の包丁です。力がよりこめやすいように、両手持ちのタイプもあります。
伸し餅や鏡餅など硬くなってしまった餅を切るのに最適です。刃を餅にあて、上から押しきって使います。
和包丁と洋包丁の違い
ここで改めて、和包丁と洋包丁の違いについて確認します。主な違いは「刃の構造」と「ハンドル(柄)の固定方法」の2つです。
刃の構造
包丁の刃は「片刃」か「両刃」がありますが、和包丁は片刃、洋包丁は両刃であることが一般的。片刃は片方だけに刃がついた「レ」の字のようになっているもので、両刃は「V」の字のように両方に刃がついたものです。
片刃のメリットは、食材の切離れがよいことと、食材の断面を潰さずに切るため切口が美しいこと。ただし利き手を選ぶため、右利き用と左利き用があります。
両刃のメリットは、食材を力不要でまっすぐに切れることと、利き手を選ばないことです。バランスがよいため、使う人間を選びません。
ハンドルの固定方法
和包丁は、基本的に差し込み式です。柄に包丁の刃の根元を収めるやり方で、目的ごとに刃を入れ替えれば済むため、さまざまな刃を集めても柄はひとつで済みます。
洋包丁は刃の根元をサンドイッチのように柄で挟み、動かないように鋲(びょう)でしっかり止めて固定します。
包丁の選び方
包丁は、日々の料理に欠かすことはできません。食材や用途によって種類がさまざまにあるため、目的によって選び方も変わってきます。
ここでは包丁の選び方について、以下4つのステップで説明します。
- 用途で選ぶ
- 刃の素材で選ぶ
- 刃渡りのサイズで選ぶ
- 価格帯で選ぶ
ステップ①用途で選ぶ
使う用途に合わせて選ぶことが基本です。たとえば頻繁に刺身を切るという方なら洋包丁では物足りないでしょうし、牛肉の筋を切るのに和包丁は必要ありません。中華料理を一度も作ったことがないのに中華包丁は不要です。
一般的には、三徳包丁と出刃包丁、牛刀もしくはペティナイフがあれば家庭料理で不自由しないでしょう。いろんな食材をひとつの包丁で切りたいのであれば、万能包丁と呼ばれる三徳包丁が便利です。
ステップ②刃の素材で選ぶ
包丁に使われる金属の種類は、実はとても豊富です。しかしそれも大別すると「鋼」「ステンレス」「セラミック」の3つとなります。それぞれに特徴が異なるため、選択肢を広げるためにも知っておきましょう。
鋼
鋼の包丁は和包丁に多く使われています。出刃包丁や菜切り包丁も鋼です。
鋼は不純物を取り除いた鉄のことを言います。鋼を使って包丁を造るときには日本刀と同じく焼き入れを行います。焼き入れをすることで刃の切れ味がよくなり、硬く丈夫になります。
鋼で造られた包丁の特徴は、切れ味が鋭く耐久性も高いこと。多くの割烹職人や寿司職人が使用しています。
ただし、パフォーマンスの高さに比例して手入れの難しさも高いことがデメリットです。使用後に塗れたままで放置すれば、すぐに錆びてしまいます。定期的な研ぎが必要なため、砥石も一緒に購入することがおすすめです。
ステンレス
最も普及しているのがステンレス素材で、最大のメリットは錆びに強いことです。
ステンレスは合金鋼で、鉄に一定量以上のクロムを含ませて作ります。その結果、錆びなどの腐食に耐えられる特性を得ました。
切れ味という点では鋼の包丁に劣りますが、家庭料理であれば十分な範囲でしょう。錆びに強いだけでなく耐久性もあるため、扱いに慎重になりすぎなくても大丈夫です。
セラミック
セラミックは金属ではないため、錆びの心配はありません。セラミックは粘土や岩石などの鉱物を混ぜて作る、ガラスやコンクリートなどと同じものです。
焼き上げて作るために熱に強いという特徴がありますが、ガラスやコンクリートと同じくもろさがあり、刃こぼれしやすいというデメリットがあります。
値段は安く扱いやすく、細かいメンテナンスも不要です。そのため料理初心者や料理頻度が少ない人、手間がかかるものは嫌だという人におすすめします。
ちなみに、セラミックは金属ではないため、他の素材のように砥石は使いません。専用の砥石があるので、それを一緒に購入しておきましょう。
ステップ③刃渡りのサイズで選ぶ
基本は自分の手にあった刃渡りサイズを選びますが、複数の人が使うなどの場合は少し困るかもしれません。そんなときは「大は小を兼ねる」で大丈夫です。包丁が長くて困ることはないので、悩んだときは長い方の包丁を購入しましょう。
基本となる包丁の刃渡り
基本となる包丁の刃渡りサイズは以下の通りです。
- 出刃包丁:15~18cm
- 菜切り包丁:15~17cm
- 三徳包丁:16~18cm
- 牛刀:18~22cm
- ペティナイフ:13~15cm
- パン切り包丁:21~25cm
ステップ④価格帯で選ぶ
ご自身の予算に合わせて選ぶ方法です。
包丁は100円ショップで販売されているものから、数十万円のものまであります。使い方包丁を選んだら、次は価格帯から予算にあったものを選びましょう。
包丁のメンテナンス方法
包丁はとても繊細な道具です。通常、衝撃に弱く刃こぼれすることが多いうえ、水気や湿気にも弱く、すぐに錆びてしまいます。
そのため、メンテナンスがとても重要です。メンテナンスには毎日自分でするセルフケアと、月1回のスペシャルケアとがあります。
毎日のメンテナンス
使用後の包丁は中性洗剤で洗い、乾いた布でしっかり水分を拭き取りましょう。水分が早く蒸発するため、お湯で洗う方法もあります。
乾拭き後は風通しのよい場所で保管してください。
月1回のメンテナンス
包丁の素材に合った砥石を使って研ぎましょう。砥石は10分ほど水に浸して水分を吸収させ、そこに包丁の刃を押し付けるようにして研ぎます。
研ぎ終えたら包丁を洗って水分を取り、完璧に乾かせば終了です。
こちらの記事では、刃物の安全な処分方法をご紹介しています。古い包丁が自宅に溜まっているという方は、ぜひ参考にしてください。
関連記事:包丁の正しい捨て方とタイミングは?捨てる以外の処分方法も紹介
包丁には種類がたくさん!目的や予算に合わせて選ぼう
包丁にはさまざまな種類があり、目的によって違うものを使います。ただし一般家庭ではそこまでする人が少ないため、いわゆる万能包丁と呼ばれるものを選ぶ方が多いでしょう。
食材や食事の種類、素材、予算などを考慮して、ぴったりの包丁を探してみてください。
包丁の買取やナイフの買取なら「刃物買取屋」へお気軽にお問い合わせください。
写真を撮るだけの簡単無料査定や、段ボールに詰めて送るだけの宅配買取もございます。
包丁の名前や種類がわからなくても大丈夫ですので、是非ともお問い合わせください。